中学・高校では教えてくれない英語の語順を正しく理解する方法

「Tom はきのう新宿でBob と映画をみました」という文があったとしましょう( 以下、「みました」は「みた」と書きます)。

英語にすると、次です。欄ごとに下線を引いておきましょう。

中学一年生くらいの訪問者は、英語自体はまだまだ見ているだけでいいんですよ。
英文

「だれが」「何を」などの欄ごとに前から順に日本語を当てると、上にあるとおりです(「ボブと」「新宿で」に「と」「で」がありますが、‘ w i t h ’‘ i n ’ があるからです。

ふつうの日本語文の欄順と並べてみましょう。
日本語と英語の語順を比較して並べてみる

「トム」は日英とも最初ですが、あとはきれいに逆になっていますよね。日本語のそれぞれの欄に番号をつけて「1 、2 、3 、4 、5 、6 」とすると、英語は「1 、6 、5 、4 、3 、2 」の順になります。まるで、板に乗せて前後にひっくり返したみたいですね。

どうしてこれほどきれいに逆になるのでしょう?

ある一点以外は、欄が同じ理屈で並んでいるからなのです。

逆になっているのに、同じ理屈?
「だれかが何かをする( した)」と言う場合の「する( した)」を動詞といいます。

上の例では「みた」が動詞です。日本語の場合、正確には、動詞「みる」と助動詞「た」の合体ですが、まとめて動詞としておきましょう。

日英の欄順のちがいでだいじなことは、ただ一つ。

「動詞の位置がちがう」という点だけです。動詞の位置が「きれいな逆順」を生む原因です。

英語のほうから説明しましょう。


聞き手が聞きたいことを順番に並べるのが英語の語順

「トム… … 」と切り出されても、聞き手の頭にはぼんやりとした[ トム] フレームしか出てきません。トムを知っている人でも、「トムが、どうした? 何だ? 」くらいです。

ところが、英語の場合、そのぼんやりフレームがすぐに明快なフレームになります。

「ボブと映画をみた」のはトムです。文の中心人物です。文の中心になる語は、文の主役なので、「主語」といいますね。

英語の場合、主語は大きな吸引力をもっていて、自分に関係の強いことばをまず吸い寄せてきます。

「みた」は、トム自身の動きなので、トムの体から切り離せませんよね。だから、この「みた」をまず吸い寄せます。
主語が最初に引き寄せるのは動詞

「トム」の次に「みた」と来ると、聞き手は助かります。頭の中にサッと[ みた] フレームができて、関係する欄( 何を、どこで、いつ、どのようにして、など) を用意しはじめます。

動詞というのは、フレームがもっともはっきりと頭に浮かぶことばです。一つの文を作るのに関係する欄を一挙に取り込んでくるのです。だから、文のしくみは動詞で決まります。

「みた」と聞けば、だれだってまっ先に「何を? 」と思いますよね。何をみたのかをあとまわしにされては、かないませんからね。

だから、「みた」は「映画」を引きつれてきます。

これで「トム、みた、映画」の順になります。「何が( だれが)、~ する( した)、何を」の欄順で、トムの行動の骨格( 話の中心部分) をはっきりさせるために、かならずこの順です。

骨格がわかると、次に聞きたくなるのは「だれと? 」「どこで? 」「いつ? 」、あるいは「どんな映画? 」ですね(「どんな映画」はこの例では出てこないので省きます)。

「だれと」「どこで」「いつ」は、どれが先になっても、話が通じないということはありません。

でも、「トムが映画をみた」ということにかかわりの強い順になるのが、英語の欄順の基本です。まあ、それが自然だ、ふつうだ、ということです。

トムは友だちのボブと映画をみたのですよね。場所や時よりも、「友だちと映画をみた」ということのほうがトムの感覚ではだいじなことですね。

自分とのかかわりの強いことです。それで、「ボブと」が先に吸い寄せられます。そして次に、友だちといっしょにいた空間( 場所)、最後に、そういうことがあった時、という順です。

したがって、はじめにあった図の順番になるわけです。
英語の正しい語順

英語ってよくできているでしょ?

主語を言ったら、あとは、聞き手が聞きたがる順にことばを吸い寄せてくるのです。

これを「吸い寄せ型」といっておきましょう。

この欄順を先頭の「トム」から見ると、自分の足もと( 自分自身の動き) からはじめて、だんだん自分から遠ざかっていくように見えます。近いところから電車道のようにまっすぐ進んでいきます。

図を変えて示しておきましょう。




助詞の代わりに英語は語順で文章の骨格を作っている

「何が」( 主語) に当たる「トム」を最初に言えば、上の欄順になるのが英語の基本です。

ところがですね、「トム」を最初に言うとはかぎらないのです。

主語の「トム」よりも先に「きのう( y e s t e r d a y )、新宿で( i n S h i n j u k u )」と言うこともあります。

「ボブと( w i t h B o b )」も先に言ってしまうことだってありえます。

話し手が早めに言いたいことを最初のほうに言うということは、話し手の自由なんですよ。

日本語でも「きのう新宿でトムは… … 」と言ったりしますよね。英語もそれと同じです。

なあんだ、英語の欄順もそんなに厳しくないんだ、と思いますよね。人間のことばですから、そんなもんですよ。

でもね、二点だけ、厳しいんです。
( 1 ) 骨格の欄順は崩せない。
( 2 ) その他の欄に入ることばは、どの欄の役割をしているのかを何かの語で明らかにしなくてはならない( 原則的に)


まず( 1 ) から。

「きのう、新宿で、トムは」の順で言いはじめたとしても、主語の「トム」を言ったら、かならず「みた、映画」の順でつづきます。

「何が( だれが)」「~ する( した)」「何を」の三つの欄は、さっきもいったように、この順を崩せません。がっちり固まっています( でたらめ欄順の話ではなく、原則の話です)

「トムは( が)」「映画を」の「は( が)」「を」に当たることばが英語にはありませんから、順番で役割を決めるのです。

動詞「~ する( した)」の前にあるのが主語「何が( だれが)」、うしろにあるのが「何を」、という取り決めです。

だから、前の例にあった「みた、新宿、トム、ボブ」の場合も、だれが何をみたのかは順番だけで決めるのです。

図に示しておきましょう。
英語のルールにそって日本語を並べると

したがって、たとえば次のような場合も順番に気をつけなくてはなりませんよ。

トムがボブを殴った→ トム、殴った、ボブ
(「ボブ、殴った、トム」の順なら「ボブがトムを殴った」の意味)

ネコがネズミをつかまえた→ ネコ、つかまえた、ネズミ
(「ネズミ、つかまえた、ネコ」の順だと… … 、わかりますよね)

英語を話す人々が、その三つの欄順にはそういう意味をもたせる、と約束しあっているのですよ。助詞がなくても困りません。


骨格以外の言葉は自由に動かせる

骨格の「何が( だれが)、~ する( した)、何を」以外の欄は、順番が意味の決め手ではありません。

「ボブと」「新宿で」には、‘ w i t h ’‘ i n ’ という語がついていましたよね。それらの語が、「だれと」「どこで」の欄に当たるということの決め手になっているのです。

単に‘ B o b ’‘ S h i n j u k u ’ と言うだけでは、どういう欄の役割なのかがはっきりしません。

もちろん、「トム、みた、映画」のあとにつづくのなら、フレームの威力で「ボブと、新宿で」の意味だろう、と聞き手も想像できますがね。

でも、それでは話し手としては不親切です。わかっているなら、きちんと言うべきでしょ。

それに、主語の「トム」よりも先に言うとなると、聞き手は混乱します。「ボブ、新宿、トム」とつづけられては、もう降参です。

だから、骨格以外の欄の場合は、それなりの合図となる語が必要なのです。この例の場合、‘ w i t h ’‘ i n ’ は、「ボブ」「新宿」は「だれと」「どこで」の欄になるよ、という合図の役目だったのです。

おや? 「きのう‘ y e s t e r d a y ’」は?

「きのう」は、日本語でも「きのうに」とは言わないのと同じく、そのままで「いつ」の欄に入ることに誤解は生まれませんね。そういうことばがいくつかあります。

もう一度、基本をまとめておきましょう。

主語「何が( だれが)」を言ったら、そのあとは「吸い寄せ型」の欄順です。かかわりの強い順に並びます。基本的には、次の順です( 主語は「だれが」を含み、動詞は「~ した」も含む、としておきます。以下、同様にします)。

英語の語順

ただし、骨格の「何が、~ する、何を」以外は、どういう欄に当たるのかを合図する語を原則的にともないます(「きのう」のような例外あり)。

それらの欄順は、骨格に入り込まないかぎり、主語より先に言っても話し手の自由です。たとえば、次のように。

基本の語順を変形させた英文

三点、補足しておきます。


補足1 : 電車の終点に決まりなし
日本語は、動詞で一文を閉とじますよね。「トムは… … みた」の「みた」が文の終点です(「~ よ」「~ ね」などの助詞がつくことがほとんどですが、まとめて「動詞」としておきます)。

動詞が文の終了合図になる、というのは日本語の基本的な決まりですよね。おかげで、どこまでが一つの文なのかが明快になります。じつに便利です。

ところが、英語には、そういう終点の決まりがありません。最後に吸い寄せられたことばが最後、というだけのことです。

補足2 : いらない欄は言わないだけ
「何が、~ する、何を」が骨格で、この三つの欄は順番を崩さずに固まっている、といいました。

あれ? 「ボクはきのう新宿へ行った」「鳥が飛んでいる」などのように、「何を」の欄に当たることばがない場合だってあるじゃないか、と思いますよね。

それは単に「何を」に当たることばがないだけのこと、と思えばいいのです。「ボクは、~ へ行った」の場合、[ 行った] フレームの中に「何を」欄は出てきませんよね。出てこないのだから、言うことがないだけですよ。

「ボク、行った、新宿へ、きのう」でいいのです。「ボク、行った」だけが骨格で、「新宿へ」は、「どこへ」欄としての合図が必要になりますよ。

「鳥が飛んでいる」は、どこに飛んでいるのかも言わない文ですね。だから、「鳥が、飛んでいる」で終了です。悩むこともありません。いらないのだから、言わないのですよ。

たったの一語でできている文もありますよね。たとえば、「手に何をもっているの? 」「どこへ行くの? 」と聞かれて、「アメ」「新宿」と一語で答える、というような場合です。英語も同じ
で、「アメ」「新宿」と言うだけです

補足3 : 動詞を言うなら、主語は省かない
日本語では、主語を省くのは当たり前のことですね。「私、私がきのう新宿に行ったとき、トムを見かけましたよ」の二つの「私」は省いて言うことが多いでしょ? とくに二番目の「私」は、同じ主語の連続を避けて、省くのがふつうです。

英語も、日本語と同じく、主語を省くことがあります。自分について「みた、あの映画、新宿で、きのう」「終わらせた、宿題」のように、です。

しかし、単純な文で、親しい関係の人どうしの場合です。

基本的には、主語はけっして省略しません。

上の「私、私が… … 」の文でも、二つとも省きません。

このサイトは、英語の基本的なしくみを考えることが目的なので、英語のその基本にしたがっています。

なお、主語があるのに動詞がないというのは、新聞の見出しなど以外では、日英ともに原則的にありません

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