日本語と英語の語順が逆になっている理由は?

日英の欄順がきれいに逆なのは、日本語も英語と同じ理屈で並んでいるからです。

どういうことか?

文の主役は主語ですが、実際には、動詞が文のフレームを取り仕切りましたよね。

したがって、日本語は動詞が最後だから、最後が文のしくみを取り仕切るのです。一番うしろから「ここで文が終わるから、みんなここに集まれ」と号令をかけるかのように、他のことばを自分のほうに吸い寄せてくるのです。

その吸い寄せ順は、英語と同じで、聞き手が聞きたがる順なのです。だから、「みた」にもっとも関係の強い「映画を」をまず吸い寄せてきます。「英語と同じ」といっても、うしろから引
っぱるので向きは逆ですよ。


「逆吸い寄せ型」です。
日本語の語順

「同じ理屈」というのは、そういうことです。

「みた」フレームが、英語と同じ理屈で、関係の強い順に他の欄を整列させるのです。

その結果、「トムは、きのう、新宿で、ボブと、映画を、みた」の順になって、英語とはきれいに逆になるのですよ。

「理屈が同じだから、逆順」ということです。

でも、「みた」は最後ですが、「トム」の体にくっついていることですよね。いったん遠くに行っても、ふたたび自分の足もとに戻ってくるわけです。

英語は、欄が電車道みたいに直線的に並びました。足もとからだんだん遠くへ離れていきました。日本語は、遠くに放たれても足もと戻ってくるブーメランのようです。

日本語の語順はブーメラン

日本語と英語の欄順を考えるときは、住所表示を思い浮かべるといいですよ。

逆順が見事にあらわれています。

たとえば、東京にあるカナダ大使館は「東京都港区赤坂7 -3 」です。

カナダ・バンクーバーにある日本大使館( 総領事館)は「8 0 0 - 1 1 7 7 , W e s t H a s t i n g S t r e e t , V a n c o u v e r , B . C . 」です。

東京のカナダ大使館の住所を英語式になおしたものと日本式とを比べてみると、逆順が明快でしょ?

日本語と英語では住所が逆になる

電話番号は、なぜか、英語も日本式と同じです。

なお、世界の言語の中では、「何が、何を、~ する」という日本語式と同じ欄順になることばは多いですよ。およそ4 5 % と一般にいわれています。

「何が、~ する、何を」の英語式はおよそ3 5 % です。残りは他の欄順です( 何かで調べてみてください)。


日本語も順番で意味が決まる

日本語には助詞があるので順番はどうでもいいではないか、という声が聞こえてきそうです。

でもね、わかりやすさという点では、日本語でも順番はだいじなのですよ。

ちょっと、実験です。次の四つの文は同じことを言っているのですが、どれがもっともわかりやすいですか?
① トムは、きのう新宿でボブと映画をみた。
② トムは、新宿でボブと映画をきのうみた。
③ トムは、ボブと映画をきのう新宿でみた。
④ トムは、映画をきのう新宿でボブとみた。

この四つは、「映画を」の位置をそれぞれ変えています( それにつれてほかも変わっていますが)。

① が「みた」にくっついていて、④ が「みた」からもっとも遠くなっています。できるだけ多くの人に尋ねてみてください。九割くらいの人が① を選ぶはずです。

似た問題で学生たちに何度か調査してもらったところ、そういう結果がいつも出ていました。

日本語でも、「○ ○ を」と言われれば「それをどうしたのか? 」とすぐに聞きたくなりますよね。たとえば、「オレ、お金を」となると、「使ったのか、なくしたのか、拾ったのか、だれかに貸したのか、あげたのか」というつながりがいくつも思い浮かぶでしょ? 拾ったなら「拾った」とすぐにつづかないと、話がじれったくて聞きづらくなります。

つまり、英語と同様に、「何を」と「~ する」がくっつくのが一番わかりやすいのです。

あとは、英語の理屈と同じにつながって、実際には英語の逆順になるのがもっとも自然なのです。

もう一つ、実験。次のA とB の文はそれぞれ「だれがだれを好き」と言っているのでしょう?
A :「あいつ、彼女、好きなんだ」
B :「彼女、あいつ、好きなんだ」

助詞がありません。でも、わかりますよね。「好き」に近いほうが「だれを( 何を)」の欄に入りますね。

助詞がなければ、「何を」の「何」は動詞のそばに置くのです。英語と同じです。

日本語も、順番で意味を決めることがあるのですよ。

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